リウマチ外科医の徒然草

より良く生きるための抜け穴探しのゆる~いブログ

RA母指の再建法の決定にNalebuff分類は役に立たない?

母指はcenter of the pillarといわれるくらいで、

手の機能の半分くらいを担っています。

 

皆さんも親指が痛くなったら、そちらの手は使わずに生活するのではないでしょうか?

ところが、リウマチの患者さんは両手ともにあちこちが痛すぎの状態で生活をされています。

母指の機能再建、変形予防は患者・治療者の悲願です。

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この治療法をご存知でしょうか?

まとめてみることにしました。

CM関節: 関節固定術 > 関節形成術 > 人工関節置換術(海外のみ)

MP関節: 関節形成術 > 人工関節置換術 ≒ 関節固定術

IP関節  : 関節固定術

 

IP関節は、靭帯再建などの方法では成績が良好でありません、ということは、

母指のうち関節固定は1関節まで の原則からは、

CM関節とMP関節の固定は不可能です。

 

しかし、リウマチでは骨破壊というよりも骨吸収により、骨がなかったり強度不足で裸子などが使用できない症例が多いです。

つまり、再建が困難ということです。

 

Nalebuff分類は、初発関節によって、TypeI~VIに分けるものです。

ゴールデンスタンダードですが、逆にこれで術式は決めるのは現時点では困難です。

どのタイプがどれくらい悪いかという情報を含んでいないためもあります。

 

TypeIVでは、MP関節の固定を行う派と関節形成派の論争もあります。

 

またTypeVIはムチランスであり、治療は困難を極めます。

f:id:orthopaedicrheumatologist:20170613203545j:plain困惑の顔の一例

 

弱者が心がける戦い方とは?

尊敬するブロガーの方の面白い記事を紹介します。

 

整形外科医のブログ : ランチェスター戦略を自らに応用

 

実社会は競争社会です。医師は比較的競争環境から隔離されている印象を持つ方が多いと思いますが、研究・臨床・クリニック経営において、常に何らかの競争があります。


そして、研究・臨床・クリニック経営は、実直に目の前の作業に没頭しているだけでは、幸運が重ならない限り結果を出すことができません。やはり、何らかの戦略が必要となります。

 

まさにいい得て妙です。どうすればこの見えざる競争を勝てるのでしょうか?

このブログでは、われわれのようなマイナー分野のマイナー専門のようなところは、弱者のとれる戦略を支持しています。

【弱者の戦略】

  1.  小規模1位・部分1位主義
  2.  強者と差別化。強者と違ったやり方
  3.  強い1位とは戦わない。自分よりも下位や勝ち易きに勝つ
  4.  勝ち易いものを発見するために対象物を細分化する
  5.  強みに集中して弱みを捨てる
  6.  最終利用者へ直接販売する
  7.  営業はお客に直接接近戦
  8.  営業地域は近場重視で範囲は狭く
  9.  実行目標は1つに絞り、個別目標達成主義
  10.  目標に一点集中
  11.  イノベーション。過去にとらわれずに新しいことをやる
  12.  軽装備。見栄を張らない。資金の固定化を防ぎ、経理の仕事は簡単にせよ
  13.  長時間労働
  14.  自分の大事な経営情報は隠す。隠密戦
  15.  弱者は調子に乗るな。小さな成功で生活内容を変えるない 

 

強みにのみ、ニッチに集中する。

リウマチ外科はもともとそのような分野ですし、膝や股関節の人工関節屋さんとは

決して戦わないようにしています。新しいことをする、アイデア勝負ですね。

研究費の獲得でも、新規の材料の開発に注力しています。

ただ、長時間労働だけは避けたいですね笑

 

ここらで、内科に鞍替えして、メインストリームに切り替えるのがいいのかもしれませんね。 あ、大事な経営情報は隠さなくては。。笑

 

 

リウマチの腱断裂予防に必要なこと 実は原因は違うところに??

リウマチ外科医をしていると、しばしば遭遇する手術の絶対適応-

そう、腱断裂です。

 

一番多いのは、手の伸筋腱皮下断裂でしょうか?

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この方の場合、中師から小指まで3本断裂していました。

整形外科のセオリーとして、尺骨頭の背側脱臼と関節包の損傷が県の断裂原因とされています。この方も高度な所見が術中に確認されました。

 

後輩の教育には、小指から1本ずつ順番に切れていくので、小指の断裂の段階で見つけて手術をすること、または切れる前に尺骨遠位の処置を行うよう、教えています。

早期の発見方法として、固有小指伸筋(EDM)の断裂を判定するEDMテストが有名で、リウマチ外科医以外への、特に内科のリウマチ医に普及が必要です。

 

しかし、本当に機械的刺激のみが原因なのでしょうか?

初診時に、初めから伸筋腱が4本とも断裂している方をしばしば見かけます

また、下の方のように、伸筋腱と屈筋腱の両方が断裂する方も見かけます

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機械的刺激が原因なら、このように両方切れることはないはずです。

 

少し古い文献なのですが、MMPの働きについて調べている論文があります。

www.ncbi.nlm.nih.gov

コラゲナーゼである、MMP-8の発現が異常に高い滑膜組織があるというのです。

invasive synovitisとされています。TypeIコラーゲンの変性を招き、断裂に至るといいます。

確かに腱が断裂部以外にも変性していて、さらに断端もややおかしいと感じる時がしばしばあるのです。

断裂修復後に、特に無理をしていないのに再断裂をきたす症例もあります。

いつもinterlacing sutureがそんなに簡単に切れるか??と思っていました。

この事実は、腱断裂症例における修復方法をさらにレベルアップするために必要な考え方を提供してくれているかもしれません。腱修復で糸をかけていい部分を判定する必要があるということですね!

 

#リウマチ#腱断裂#MMP#再断裂時々ある#もっといい方法を

 

 

海外学会の口演で緊張しないコツ

管理人です。

前から一度行きたいとは思っていたのですが、昔行ったフランスがあまりにもよかったので、今回は狙ってヨーロッパに学会に行ってきました。

 

採択率も調べずに複数投稿したところ、2つともacceptされました( ^ω^ )

 

旅行のつもりで真っ先にガイドブックを買ってしまって浮かれてました

大事な研究成果の公表ですもんね。気合も入ります。

 

発表するときのことを考えないといけませんね。

直前は生きた心地がしませんでした。

 

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英語での口演は、私は実はたったの3回目です。初めては2010年です。

TOEICも5年前に受けた時は500点台(!)だったので、初めての時は500点で口演をしていたことになります( ;´Д`)

 

いまでもおそらく600点程度なので、Q&Aは地獄以外の何物でもありません。

それでも心掛け一つで落ち着くことができます。

・あらかじめ学内で予演会をして、想定質問を作成しておく

  これが王道です。キーワードが一つでも聞こえたら、これだ!って、自分のペースでしゃべり続けることです。

 

・原稿とスライドの文章を一致させておく

  日本語なら多少の表記の揺れやアドリブは可能ですが、外国語では困難です。

 読み文章のうちキーワードはスライドにそのまま埋め込むのがいいです。

 

・当日2時間前から日本人と話さない

  日本でいくら覚えても、英語のイントネーションと文章の滑るペースは日本語と全く違います。直前に日本人と話して、思考回路が戻らないようにしましょう。

 

・外国人は日本人の繊細な評価、思考についてこれないとたかをくくる

  これはややヤケかもしれません。日本人の発想は少し大味な外国人のそれとは異なります。ちょっとした気遣いから生まれた着想などの研究は、感嘆をもって受け入れられることが多いです。対等にdiscussionされることはないと肚をくくりましょう

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いかがでしょうか。

まだいろいろ他にも工夫されている方がおられると思います。ご意見頂戴できれば幸いです。